背景
都市のヒートアイランド現象緩和のための緑化の推進、水冷の復活、流水空間の創出等々、都市の熱管理を進めていくための新たな水需要が発生しており、近い将来、益々需要が増大すると予想される。そのための新規水資源開発を遠方のダムに頼る時代ではない。そもそも、水道水の水質そのものが、熱管理用水としての必要に必ずしも合致していない。既存の水システムを見直し、都市内に持続型水資源を確保し、環境と共生しつつ賢く水を使いまわす水システムへの革新が強く求められる。その際、分散型水資源ストックとしての地下水、都市に偏在する安定した水資源である下水(汚水)処理水の利用は必然である。下水処理水は、雨が期待できない渇水時の分散型地下水涵養源としても貴重である。下水処理水を開放的に再利用するにしても、あるいは分散的に地下水環境に戻すにしても、安全と安心が担保されていなければならない。そのための水再生技術として膜技術、中でもメンブレンバイオリアクター(MBR)が注目されている。しかし現状では、水質が良くてもエネルギー多消費であったり、未消化経口医薬品等の微量化学物質の環境への拡散の懸念を払拭できる技術としては不十分であったり、その潜在的可能性に比して現状技術は「持続可能な」技術というには未熟である。将来を見据えた新たな技術開発が必要な時期にきている。